LOGIN『神に匹敵する生物、禍神か……。世界にはまだ見ぬ強者で溢れているのだな。』
「えぇ、そうですわね。古代文明の崩壊以降は人と接触することはなったですけれど、彼らは確かに存在していますの。そしてその禍神三体の討伐こそがわたくしが龍と相打ちして死んだ私の目標ですわ。前回の私は討伐のためのパーティを集めようと動いてはいましたがその前に死にましたもの。今回は最初っから妥協なしで行きますわよ。」
『そう……か……』
「というわけでわたくしは早急に強くならなければいけませんの。そして、討伐対象を探すために旅に出る必要もありますわ。だからいずれお母様にもこのことを話さなければいけないとは思っていますけれどそれは今ではないんですの。先のことを話して余計な心配をかけたくないですしね。」
この話をお母様にしたら絶対に止められますもの。お母様もなかなか譲らないでしょうし、ぶっちゃけ説得するのがめんどうですのよね……こんなことを口に出したら怒られるのは分かりきったことですし、お口チャックいたしますわ。
『ところでその旅は一人で行くのか?』
「当然一人で行きますわ。生半可な強さで連れて行くのは死なせるようなものですし、戦いに付いてこれるような戦力をこの領から引き離すのはさすがにまずいですわ!」
『そうか……寂しくなるな。』
「まだまだ先の話ですわよ!貴族令嬢の義務として一応学園は卒業するつもりですし。それに、旅に出たら帰って来れないわけでもないですもの!もしかしてもう戻ってくるなとでも遠回しに仰ってるんですの!?」
『そんなこと……言うわけがないだろうに。例え一人で旅に出てもこの家はこの領は……アビー、お前の実家だよ。いつでも帰ってこい!』
「だからまだ先の話だと何度言えば分かるんですの!」
『手紙も、定期的に送ってこいよ!』
「だ〜か〜ら〜!まだ先だって言ってんですわ!耳腐ってるんですの!」
『必ず生きて帰ってこいよ。』
「チッ」
もうこのアホにいくら説明したところで伝わりそうもないですわね。きっとわたくしの一人旅がショック過ぎたのか情報を処理しきれていないんですのね。時間を無駄にしないよう素振りして待ちますの!
「ですわ!ですわ!ですわ!えいやっ!ですの!えいやっ!ですの!」
こんな代わり映えのない日々が一日、また一日と過ぎていった。そしてついに騎士団の魔窟演習(with アビゲイル)が始まる。
『アビゲイル、これを。』
「グッ……こ、これは?」
な、なんですのこれ!大剣にしても重すぎますわよ!こんな重いのわたくし相手じゃなかったら腕やっていますわ!
『これは重力大剣だ。とは言ってもこれはただ死ぬほど堅くて重いだけの大剣なんだがな。特に特殊な効果もない。完全に名前負けしてるよな?』「まさか……アダマンタイ──────」
『なわけねぇだろ。アダマンティスだアダマンティス。アダマンタイトとかそんな伝説素材で作った武器を幼い娘に渡すかっての!あれで出来た武器は大きくなってから渡してやるから今はそれで我慢しろ。』
アダマンタイト。それは全鍛冶師憧れの不壊属性を持つ伝説素材である。物体である以上ダメージを蓄積してしまうが、その素材で作られた武具は周囲に存在する魔力を使って自己修復するのである。
また、その魔力吸収利用の性質により武具の魔力強化との親和性が非常に高いのも伝説素材たる所以である。もっとも、その力を使いこなせる者など今となってはただ一人を除いて存在しないのだが……
「ははっアダマンティスも十分高級素材じゃあいりませんか。ありがたく使わせていただきますわ。」アダマンティスもまた生体武器であるが故、原理こそ違えど同じように自己修復機能を有していた。また、非常に堅く鋭い。これは生物の素材故にある種の永久資源であるため価格が安定しており、魔力強化との親和性も低いためアダマンタイトと比べて安価である。
安価とは言ってもそれは伝説素材であるアダマンタイトと比べた場合での話である。魔法に弱いという性質があるとはいえアダマンティスは非常に強力な魔物である。当然素材採取の依頼料も非常に高い。そのため大剣1本分でちょっとした城が建つ程の価値がある。
それを幼い娘にプレゼントする時点でルミナリア辺境伯家当主アルバード=ルミナリアは……親バカである。
『で、こいつを持った感触はどうだ?』
「めちゃくちゃ思いですけれど振れなくもないですわね。これなら力加減を間違えて剣をへし折るなんてことはなさそうですわ!」
『おいアビー、今なんつった?』
剣を一本ダメにしたことまだお父様に言ってなかったですわね……
「えっと……武器庫にある武器は自由に持ち出していいとの事でしたのだ大剣を持って仮想敵相手に修行をしていましたの。その時少し力強く振りすぎたのか大剣を歪ませてしまいましたの。」
『はぁ……アビー、お前さぁ。』
「ちゃ、ちゃんと魔窟の魔物を一人で倒して回ったときの素材を売って大剣を直してもらいましたわ!だからもう大丈夫ですの!」
『怒ってないからそんなに焦らなくていい。』
「そ、そんなの信用出来ませんわ。わたくし知っていますもの。怒ってないから……は怒っている時に言うやつだってことを!」
『はぁ……いいか?アビー、武具は消耗品だから大事に使っていてもいつかは壊れるもの。今回アビーがしたのは力強く剣を振っただけ。それで壊れるなら壊れた武器の方に問題がある。それにもう直せたんだろ?ならなんの問題もない。ただ……次からはちゃんと壊れたって報告しろよ?』
「分かりましたわ。次からはきちんと報告いたします。」
『今回の演習は俺もついて行きたいところなんだがあいにく仕事が立て込んでてな。すまんな、アビー。お前の強さ的に大丈夫だとは思うが実戦では何が起こるか分からない。油断はするなよ?』
「油断なんて当然しませんわ!もう二度と死にたくなんてありませんもの。何があっても誰一人欠かさず全員で帰ってきますわね。」
わたくしは当然死ぬつもりはないですし、誰も死なせるつもりもないですもの!こんなところで躓いてなんかいられませんわ!
『よし、それじゃあ行ってこい!上に立つ者としては失格かもしれんが一番大事なのはお前の命だ。騎士たちとお前のどちらかだけが助かる時、迷わず自分の命を選択しろよ。』「そんな状況にはならないでしょうけど、わかりましたわ。それじゃあいってきますわ!」
「お母様お母様!ペットを捕まえて来ました!名前は|栄養バー《リーゲル》です!」「まぁ、なんて愛らしい子なんでしょう。ところでアビーちゃん?」 何か変なものでも受信したのでしょうか。名前を聞いた瞬間顔色が変わりましたわね。まぁお母様はこういう方なので気にはしませんけれど。「はい、なんでしょう。」「その白い狐さんの名前のことで一つ聞きたいことがあるの。――何か変なニュアンスはなぁい?」 何か妙なことを突然言いますわねお母様。でもこれと言って心当たりはないんですわよね。「特に何もありませんわよ?しいて言えば遠い異国の言葉らしいんですけれど意味はよく分かりませんでしたの。でも語感が良かったので採用してみましたわ!この子に相応しい名前はリーゲルの他にないと断言できますわ!なんせわたくしが考えましたもの!」「そう、ならいいわ。ところでその子はうちで飼うのかしら?」「はい、そのつもりですわ!狩人は狩りをする時に飼い慣らした獣を使って獲物を誘導すると聞いたことがありますし、きっとリーゲルはわたくしの良きパートナーになってくれますわ!」「魔物といえど生き物は生き物、その生き物を飼うというのならそれなりの覚悟が必要よ。それは分かっているの?」 ふっふっふ……お母様はわたくしを誰だと思っているんですの?わたくしはモフモフマイスター(自称)ですのよ!それくらい承知の上ですわ!「もちろんですわ!全力で可愛がるつもりですもの!」
無事帰宅ですわ!まぁ日帰りで行ける範囲なんてたかが知れてますし無事もクソもねぇんですけどね。おっと、クソだなんてお下品な言葉を使ってしまいましたわ!こんな調子ではおばs……じゃなくてお年を召した方に怒られてしまいますわね。オホホホホホっ!「あ、そうそう!一応家族が増えるわけですしお父様……に言っても仕方ないですしお母様に報告しておきましょうか。こんなにもモフモフでプリティな狐さんですけれど一応分類上は魔物ですし"チェストォォォォォォォォォォ!!!"されない為にみんなへの紹介もしないとですわね。」 あらあら、可哀想な狐さん。こんなに震えちゃっていますわ。大丈夫ですので安心してください。わたくしがちゃーんとうっかり食べちゃわないように言い含めますわ。「あ、そうですわ!」 家族になるんですもの!名前を付けないとですわね。わたくしったらうっかりしてました。そうですわねぇ……リーゲルなんてどうでしょう!響きも悪くないですしね!たしか遠い異国の……なんてしたっけゲルマン?とかいうところの言葉らしいですけれど詳しくはよく分かりませんわ。 まぁそんなのはどうでもいいですわよね!こういうのは勢いとパッションと語感が命ですもの!我ながらネーミングセンスが冴え渡ってますわね!さすがわたくし!「おいでリーゲルちゃん!さぁ、行きますわよ!」※【独】Riegel(リーゲル):栄養バー
そいつは私に獲物を与えたきた。でも……魔物食べるの身体に悪いし、別にいらないんだよね私。あ、あのぉ……ほんと大丈夫なんで出来ればそのまま回れ右してお帰りいただけると幸いです。はい!「クゥーン……」 いや、でも今これを食べなきゃ殺られるかもしれないっていうのも考慮しなきゃだよね。いやでも、うーん……「クゥーン……」 いつこいつの堪忍袋の緒が切れて襲いかかってくるかも分からないしそろそろ覚悟決めなきゃだよね。いや、でもなぁ……「クゥーン……」「――"わたくしも困ってしまいますわね。"」「キュッ!?」 やばい!殺られる!た、食べます!食べますから!許してくださいご主人様!!「――――――"これ"も念の為試しておくべきですわね。はいどうぞですわ。」 おにい……ちゃん?「キャン!!キャン!!キャン!!」 え?なんで!お兄ちゃん!目を覚ましてよお兄ちゃん!ねぇってば!なんで目を覚ましてくれないの?ねぇ!ねぇ!そんな……いつものイタズラだよね?そうだよね?だってお兄ちゃんかくれんぼ上手だったじゃん!そりゃ正面から戦ったら私が勝つけどさ!『やっぱり強いな――は。お前自慢の妹だな。でもまだ俺も負けてやるわけにはいかないんだよね。だって俺は――のお兄ちゃんだからさ。』『いや〜ついに負けちゃったかぁ。強くなったな――。お前より弱い俺じゃ頼りないかもしれないけどさ、なにかあったらいつでもお兄ちゃんのことを頼ってくれよな。なにがあっても駆けつけてみせるから。』『お前なら一人でもやれるよ。母さんはああ言ってるけどさ、なんだかんだお前のことは認めてるから大丈夫。あとのことはお兄ちゃんに任せとけって!愛してるぞ、俺の自慢の妹。』 なにがあっても駆けつけてくれるって。いつでも頼れって。お兄ちゃんが死んじゃったら頼れないじゃんか……。「喜んでもらえてよかったですわ!どうぞ遠慮しないで食べてくださいまし!」 ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!
「あら?わたくしは何しにこの森に来たんでしたっけ。まぁ、何はともあれ狩りはそれなりにしましたしこの辺で一旦終わりにしましょう。お腹も空いできましたし親交を深めるためにも食事にしましょうか。東方の島国には"同じ釜の飯を食う"なんて言葉もあるらしいですしね。それはそうとこの狐さんは何が好みなんでしょう。これとかはどうですの?」 「クゥーン……」 豚さんはダメみたいですわね。 「じゃあ……これは?」 「クゥーン……」 トカゲさんもダメですか……。 「これなんかどうですの?」 「クゥーン……」 鳥もダメですのね。 「あなた、以外と食の好みがありますのね。わたくし、野生で生き延びるためにもっとなんでもがっつくのを勝手にイメージしてましたわ。うーん……ここまで全滅となるとさすがのわたくしも困ってしまいますわね。」 「キュッ!?」 「急にがっつき始めましたけれどどうしたんですの!?別に好き嫌いしたからって捨てたりはしないから安心して欲しいですわ!わたくし、アビゲイルを甘く見ないでくださる?そうは言ったものの手持ちにあるのはだいたいが同系統の上位種と下位種ですし……。となると最初に候補から外していた"これ"も念の為試しておくべきですわね。はいどうぞですわ。」 「キャン!!キャン!!キャン!!」 「喜んでもらえてよかったですわ!どうぞ遠慮しないで食べてくださいまし!」 まさか狐の魔物が当たりだなんて思いませんでしたわ。
※以下狐語訳です。 ふんふふんふふーん♪今日もいい天気だなぁ〜♪なんだか最近やけに駄竜が少ない気がするし最高だね!」 駄竜ってなんて言うかヤンキーみたいな感じでさ、いちいち難癖つけて攻撃してくるからクソウザイんだよね。ん?なんか……嫌な予感がする。具体的には昔イタズラがバレて母ちゃんをガチギレされた時くらいの嫌な予感が。 まさか……抜き打ちチェック?嫌でも前回うちに来て生活状況確認された時から2ヶ月しか経ってないのにそんなわけないか。じゃあなに?まさかの存在を脅かすほどの格を持つものがこの森に入ってきたってこと?いや、それこそありえない。ありえない……よね?◇◇ い、いやぁぁぁぁぁぁああ!!!ば、化け物ぉぉぉぉぉぉ!!!悪寒の正体はこれぇ!?ていうかえ?人型!?人型になれるってことは知能も高いってことでしょ?脳筋ならまだしも知能高いとか終わったわ。あぁ死んだ。もう死んだ。来世は長生きできるといいなぁ。「はうっ!あんなところに可愛らしいモフモフさんが!しかもそのモフモフが白銀の毛の狐さんとはわたくしスーパーウルトラグレートデリシャスワンダフルついてますわね!これで勝つるですわ!」 これは……一応人語みたいだけど何言ってるのか全然理解できないよぉ!怖いよぉ!単語はわかるのに文章が意味不明すぎるよぉ!なにこれ隠語? 「さぁ〜おいで〜怖くないですわよ〜?」 いや、怖いよ!怖いに決まってるよ!母ちゃん助けて!もうわがまま言わないからぁ!あぁもうヤダおうち帰るー!ママァ”ァ”ァ”ァ”ァ”!!!
「モフモフ〜♪モフモフモッフモフ〜♪わたくし〜のあいぼ〜うはどっこにいる〜♪可愛い可愛いわたくし〜のモフモフさ〜ん♪わたくし〜はここよ〜出ておいで〜♪」【モッフモフ第6番『相棒』-第2楽章 作詞作曲 アビゲイル=ルミナリア 】より そんなこんなで森を散策すること二時間。一向に見つからないモフモフ。性懲りもなく突撃してくる|駄竜《バカ》共。なんなんこいつら!さっさとピーねよ!てかわたくしについてる血で同じバカ共の末路を理解できねぇのか?あぁん?おっと失礼致しました。つい美しくない言葉を使ってしまいましたけれど、普段はこんなんじゃありませわ!本当ですわよ!チッ……全部全部あの駄竜が悪いんですわ!モフモフA『何あの化け物!竜を何体仕留めればあそこまで濃い竜の匂いが付くのさ!逃げなきゃ殺られる!逃げなきゃ殺られる!』モフモフB『あ、やばい僕死んだ。お父さんお母さん、先立つ親不孝者な僕をお許しください。』モフモフC『……………………………………………………………………………………オジャマシマシタ。』 上位の魔物の血は魔物除けの結界に使うとも聞きますし、駄竜の血の影響でしょうか。やっぱりあのバカ共のせいでしたか。あとで根絶やしにしないとですわね。余計な予定を増やすだなんてあの駄竜共サイテーですわ! 「はうっ!あんなところに可愛らしいモフモフさんが!しかもそのモフモフが白銀の毛の狐さんとはわたくしスーパーウルトラグレートデリシャスワンダフルついてますわね!これで勝つるですわ!」"プルプルプルプルッ"「さぁ〜おいで〜怖くないですわよ〜?」"プルプルプルプルッ"『修羅が……修羅がいるよォ……私美味しくないからぁー!私食べても美味しくないから殺さないで〜!』「ほーらわたくし特製の干し肉ですわよ?食べたいでしょう?」"プルプルプルプルッ"『あ、私は今日死ぬんだ。あの方優しいな、今から殺す相手に慈悲として最後の晩餐を用意してくださるなんて……アハハハハハッ!』「ほーらおいでー!」 "プルプルプルプルッ"『イィィィィィィィィヤァァァァァァァァ!!!!』